食品の製造委託と施設の運営受託の契約書

食品の営業許可は、営業の施設について、営業を営む人または法人が受けるものです。製造を任せる、施設の運営を任せるときは、許可の名義と、許可を失ったときの動きを先に書いておきます。

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契約書の題名が「製造委託」でも「運営受託」でも、営業者は営業の実態で決まります。名義と実態がずれたまま始めると、許可の取消しや承継のときに、どちらが何をするのかを決める手がかりがありません。

このページの要点

  • 営業許可は営業の施設ごとに受ける(食品衛生法55条)。施設の所在地、許可の種類、有効期間・条件を別表に特定し、運営の形は窓口の確認を前提条件にする。
  • 許可の取消し・営業の禁止・停止(60条・61条)は、通知、履行の停止、催告を要しない解除に結びつけ、停止は日数で解除に移る書き方にする(民法541条・542条)。
  • 許可営業者の地位の承継(56条)と契約上の地位の移転(民法539条の2)は別。事前の通知と承諾、不承諾のときの解除を書く。
  • 衛生管理は営業者が措置を定めて遵守する(51条)。記録の保管と閲覧、逸脱時の報告、回収(58条)の役割を決め、運営受託では修繕・保険・公的支援の返還・設備の帰属を分ける。

結論:食品の許可は「どの施設で、誰が営む営業か」に付く。契約書はその二つを先に書く

食品を作る、加工する、調理する、運ぶ、売る。こうしたことを「業として」行うことを、食品衛生法は「営業」と呼びます(4条7項)。そして営業を営む人または法人が「営業者」です(同条8項)。営業のうち、公衆衛生に与える影響が著しいものとして政令で定められたものは、営業の施設ごとに、都道府県知事の許可を受けます(54条・55条1項)。知事は、その営業の施設が、都道府県の条例で定める基準に合うと認めるときに許可をします(55条2項)。許可の対象になっていない営業のうち一定のものは、あらかじめ営業所の名称や所在地を届け出ます(57条1項)。

この仕組みを契約書の側から眺めると、食品の製造を任せるとき、施設の運営を任せるときに、最初に確かめたいことが二つに絞られます。一つめは、その営業はどの施設で行われ、その施設について許可(または届出)を受けているのは誰か。二つめは、契約が終わったり、許可が取り消されたり停止されたりしたときに、許可の名義、施設、設備、記録が誰の手元に残るか。この二つが書かれていない契約書は、平時には問題なく回っても、いざというときに、どちらが何をするのかを決める手がかりがありません。

このページは、食品の製造委託と、食品の処理・加工などの施設の運営受託を、許可の名義・取消しと解除・地位の承継・衛生管理・費用と責任の分担という角度から整理します。許可の種類の全体像は許可・登録・認定の違いと契約書、相手が許可を持っていることを約束させる条項は許可の保有を相手に約束させる契約条項のページに分けてあります。製造物の品質保証や表示の細部、許可を受けるための手続は、このガイドの対象外です。

製造委託と施設の運営受託では、許可の置き場所が違う

「製造委託」「運営受託」という言葉は、契約書の題名としてよく使われますが、食品衛生法は題名を見て許可の名義を決めるわけではありません。見られるのは、現実に営業を営んでいるのが誰か、その営業をしている施設が条例の基準に合っているか、です。ですから契約書は、題名ではなく、営業の実態を文章にして書くことが出発点になります。次の表は、よくある四つの型を並べて、許可の置き場所と、契約書で特定しておきたいことを整理したものです。

型ごとの許可の置き場所と、契約書で特定すること

型営業を営むのは誰か許可・届出の置き場所契約書で特定すること
受託者の施設で作らせる製造委託受託者が、自らの施設で、自らの営業として製造・加工する。委託者は注文して引き取る受託者の施設について、受託者が許可(または届出)を受けているのが通常の形施設の所在地、許可の種類、番号、有効期間・条件/製造できる品目の範囲/施設や設備を変えるときの事前通知
委託者の施設・設備を使って受託者が作る製造委託現場で作る受託者か、施設を持つ委託者か。契約の組み方と実態で見方が分かれうる誰を営業者として許可を受けた形にするのか、許可の窓口での確認が必要営業の主体を契約書に書く/許可名義人/施設の管理責任/確認した窓口と日付の記録
施設の運営受託運営を任された受託者が日々の営業を営む。施設の所有者は所有と監督にとどまる形が一般的運営者が営業者として許可を受ける形か、所有者が許可を持ったまま運営に関与する形か、実態に合わせて決める運営開始の前に許可が整っていること(条件)/許可名義の切替えの時期/終了時の許可の扱い
設備つき施設の貸与借りた側が、自らの営業として営む借りた側賃貸借か運営受託かを実態に合わせて選ぶ/設備の基準適合の責任/原状回復

表の二行目と三行目は、契約の書き方よりも前に、事実の確認が必要な部分です。「受託者が現場で作るのだから受託者が営業者」「施設は委託者のものだから委託者が営業者」と、直観で決めてしまうと、許可の名義と営業の実態がずれたままで契約が始まってしまいます。どの運営の形なら誰を営業者として許可をするのかは、施設を管轄する窓口の運用や、条例の基準に左右されるため、条文と所管の資料で確認が必要です。契約書には、確認した結果を前提条件として書くのが堅い書き方です。たとえば「運営の開始日までに、乙が営業者として必要な許可を受けていること」を、運営受託の効力が生じる条件にします。

許可には有効期間や条件が付くことがあります。知事は、許可に五年を下らない有効期間その他の必要な条件を付けることができます(55条3項)。有効期間を付けるかどうか、どんな条件を付けるかは、個々の許可の内容によりますから、契約書では「許可証に記載された期間・条件」とだけ書かず、別表に写して特定します。契約期間が許可の期間より長いとき、更新を受けられなければ途中で営業が続けられなくなるので、更新の見通しを確認する場面を契約期間の中に置いておきます。更新の管理の型は許可の取消し・停止・失効のときの契約の出口のページでも扱っています。

確認の問い契約を結ぶ前に、相手と自社に確かめておく問い

  1. この営業は、どの施設で行われ、その施設の許可を受けているのは誰ですか。

    理由許可は営業の施設ごとに受けるため(55条2項)、施設と名義人の組合せを書面で特定しないと、後で「別の施設の許可だった」というずれが起きます。

  2. 許可の種類と、取り扱える品目の範囲はどこまでですか。

    理由許可の対象になる営業の範囲は営業の種類ごとに区切られています。契約で頼もうとしている製造・加工が、その許可の範囲に入るかを、許可証の記載で確かめます。

  3. 許可の有効期間や条件はありますか。契約期間より短くありませんか。

    理由知事が付ける有効期間や条件(55条3項)は、許可ごとに違います。契約期間の途中で更新時期が来るなら、更新の確認と報告を契約の義務にしておきます。

  4. 運営の形(誰が現場で営むか)について、窓口に確認しましたか。

    理由営業者は営業を営む人または法人(4条8項)で、実態によって決まります。確認した日付と窓口を記録して、契約の前提条件にします。

  5. 施設の基準に合わなくなる変更(増改築、設備の入替え)を、誰がどう決めますか。

    理由施設の基準違反は、許可の取消しや営業の停止にもつながります(61条)。変更の事前通知と承諾の手続を決めておくと、気づかないうちに基準から外れることを防げます。

許可の取消し・停止を、解除と履行停止の事由にする

知事は、営業者が一定の規定に違反した場合や、許可に付けた条件に違反した場合などに、許可を取り消し、営業の全部もしくは一部を禁止し、または期間を定めて停止することができます(60条1項)。営業の施設が条例の基準に違反したときは、施設の整備改善を命じ、または許可の取消し、営業の禁止、期間を定めた停止をすることもできます(61条)。ここで大切なのは、取消しと停止は性質が違うことです。取消しなら、その営業はもう続けられません。停止は期間があり、その間だけ営業ができない状態です。

契約書に何も書いていないと、民法の一般の解除によることになります。履行しない相手には、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ解除します(民法541条)。ただし、債務の全部の履行が不能であるときや、履行の拒絶が明確なときなどは、催告をせずに直ちに解除できます(民法542条1項)。許可を失った相手に対して、催告をして待つのは、現実的ではありません。その間に無許可で製造を続けさせてしまえば、委託した側にも問題が及びます。そこで、許可の取消し・停止を、契約書の中で解除や履行停止の事由に位置づけておくのが一般的です。

許可に処分があったとき、契約が動く順序の一例

  1. 通知処分を受けた、または受けるおそれがあるとき、直ちに相手に通知する。処分の内容、対象の施設・営業、期間(停止のとき)、処分の理由を書面で知らせる
  2. 履行の停止取消しや禁止、停止の対象になった範囲の製造・運営を止める。委託者は発注を止め、受託者は仕掛品・在庫の扱いを申し出る
  3. 一部の解除または全部の解除停止の期間が限られているなら、その期間だけ止める。取消しなら契約を解除する。一部の施設・品目だけの処分なら、その範囲だけを解除する選択肢もある(民法542条2項の考え方)
  4. 精算と記録の引渡し済んだ分の対価、仕掛品・原材料・包材の引取りと費用、製造記録・衛生管理の記録の引渡しを決める
  5. 再開の条件停止の期間が終わったときに再開するには、処分が解けたことを示す資料の提出と、委託者の確認を条件にする

全部を一度に決める必要はありません。通知と履行停止、解除の三点が書かれていれば、その後の精算は別表や個別の合意で補えます。

書き方の例(一般的な例)許可の取消し・停止を扱う条項の書き方

取消しの扱い

よくある書き方乙が営業の許可を取り消されたときは、甲は契約を解除できる。
整えた書き方乙は、営業の許可の取消し、営業の禁止または停止の処分を受けたとき、または受けるおそれがあるときは、直ちに甲に書面で通知する。乙が許可を取り消されたときは、甲は催告を要せず、契約の全部または一部を解除できる。

理由「受けるおそれ」の段階で通知を求めないと、処分が出てから初めて知ることになります。催告を要しない旨を書くと、民法541条の催告の手順を省けます。

停止期間中の扱い

よくある書き方営業の停止中は、乙は製造を行わない。
整えた書き方営業の停止の処分を受けた期間中、乙は処分の対象となった範囲の製造を行わず、甲は当該範囲の発注を行わない。停止の期間が○日を超えるときは、甲は契約の全部または一部を解除できる。停止中の費用は、停止の原因を作った当事者が負担する。

理由停止は期間が決まっているため、直ちに解除するほどでない場合もあります。解除に至る期間と、停止中の費用の持ち方を書いておくと、停止を巡る争いが避けられます。

施設の基準違反

よくある書き方乙は、法令を遵守して製造する。
整えた書き方乙は、営業の施設を条例で定める基準に適合した状態に保つ。行政庁から施設の整備改善の命令を受けたときは、直ちに甲に通知し、改善の内容と期限を報告する。期限内に改善されないときは、甲は契約を解除できる。

理由包括的な法令遵守の約束だけでは、施設の基準違反(61条)に対して何をいつまでにするのかが決まりません。命令を受けたときの報告と期限まで書くと、実際に動けます。

第○条許可等の喪失・停止

  1. 乙は、本契約に基づく業務に必要な営業の許可(以下「本許可」という。)を、別表に記載した施設について受けていることを表明し、契約期間を通じて維持する。
  2. 乙は、本許可について、取消し、営業の禁止もしくは停止の処分、施設の整備改善の命令を受けたとき、またはそれらを受けるおそれがあると知ったときは、直ちに甲に書面で通知し、処分の内容、対象、期間および理由を報告する。
  3. 乙が本許可の取消しを受けたときは、甲は催告を要せず、本契約の全部または一部を解除できる。営業の禁止または停止の処分を受けたときは、甲は、その範囲および期間において発注を停止し、停止が○日を超えるときは本契約の全部または一部を解除できる。
  4. 前項の解除または停止があったときは、甲乙は、既に完了した部分の対価、仕掛品および原材料の引取りと費用、製造記録その他の記録の引渡しについて、別途協議して定める。

条文例は一般的な書き方の一例です。実際の使用では、許可の種類、処分の種類、通知の期限(例:○日以内)と、停止の日数を、委託の実態に合わせて入れます。

営業の譲渡・相続・合併・分割と、許可営業者の地位の承継

許可営業者が営業を譲渡したとき、または許可営業者について相続、合併、分割(その営業を承継させるものに限る)があったときは、営業を譲り受けた者、相続人、合併後の法人、分割によって営業を承継した法人が、許可営業者の地位を承継します(56条1項)。承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、都道府県知事に届け出ます(同条2項)。届出営業者についても、同じ仕組みが準用されています(57条2項)。

ここで押さえたいのは、許可営業者の地位の承継と、契約上の地位の移転は、別の話だという点です。許可営業者の地位は、法律の定めによって、一定の事由があれば承継人に移ります。他方、委託契約の当事者としての地位が承継人に移るかは、契約の問題です。契約上の地位を第三者に譲渡する合意をしても、相手方が承諾してはじめて、契約上の地位は移転します(民法539条の2)。ですから、製造を委託している受託者が営業を譲渡したとき、受託者の許可の地位は譲受人に移っても、委託者との契約は、委託者の承諾がなければ移りません。委託者は、「知らない会社に、いつの間にか製造を任せている」状態を避けるために、承継の事前通知と承諾の条項を置いておきます。

書き方の例(一般的な例)営業の譲渡・相続・合併に備える条項の書き方

承継の通知

よくある書き方乙は、営業を譲渡したときは、甲に通知する。
整えた書き方乙は、営業の譲渡、合併、分割、事業の承継その他許可営業者の地位に変動が生じる事由が見込まれるときは、実行の○日前までに、甲に書面で通知する。相続が生じたときは、相続人は、知った日から○日以内に、甲に書面で通知する。

理由事後の通知だけでは、承継人が許可を引き継いだかどうかの確認が間に合いません。事前の通知期限と、相続のときの通知の期限を分けて書きます。

契約の承継

よくある書き方乙の承継人は、本契約の権利義務を承継する。
整えた書き方乙が営業を第三者に承継させる場合、本契約上の地位の移転には甲の書面による承諾を要する。甲が承諾しないときは、甲は本契約を解除できる。承継人が許可営業者の地位を承継した場合は、承継の届出書の写しを甲に提出する。

理由許可の承継は法律で生じますが、契約の承継は合意です。承継人に当然に契約を引き継がせる書き方にすると、委託者が選んだ相手ではない者との契約になります。

許可営業者の地位の承継と、許可の貸し借りは、見た目が似ているようで、まったく別です。承継は、営業そのものが移ることで生じます。一方、営業は元の営業者のまま、名義だけを他人に使わせる形になれば、別の問題が生じます。その線引きは、許可の名義貸し・又貸しにならない委託の組み方のページで整理しています。

衛生管理の実施者と記録:誰が定め、誰が守り、誰が見られるか

営業者は、厚生労働省令で定められた基準に従って、施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければなりません(51条2項)。基準には、施設の内外の清潔保持やねずみ・昆虫の駆除などの一般的な衛生管理に加えて、食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理する取組が含まれます。小規模な営業者などには、取り扱う食品の特性に応じた取組が求められます(同条1項)。つまり、衛生管理の措置を定めて守る主体は、営業者です。製造委託では、施設を持ち、そこで営業を営む受託者が、措置を定めて守る立場になるのが通常です。

ところが、委託者が自社の名前や商標で製品を販売するときは、委託者自身も、食品を販売する営業者として、責任の外に立てるわけではありません。たとえば営業者が基準に違反した食品を回収するときは、回収に着手した旨と回収の状況を、遅滞なく都道府県知事に届け出ます(58条1項)。基準違反などの場合には、廃棄その他、危害を除去するために必要な処置を命じられることもあります(59条1項)。そこで契約書は、受託者の衛生管理の義務を書くだけでなく、委託者がそれをどう確認でき、問題があったときに誰がどの順に動くかまで書いておきます。

衛生管理に関する契約条項の分担の例

事項受託者(現場の営業者)委託者契約書の書き方
衛生管理の措置の作成と実施基準に従って措置を定め、遵守する(51条2項)内容の確認を求められる「甲の求めがあるときは措置の内容を示す」と書く。数値の基準は法令・省令に委ねる
記録の作成・保管製造・衛生管理の記録を作り、所定の期間保管する写しの提供や閲覧を求められる保管期間は「所定の期間」とし、閲覧・写しの範囲と費用を決める
施設への立入り事前の通知を受けて受け入れる合理的な頻度・範囲で確認する立入りの通知期限、同行者、秘密の扱い、撮影の可否を決める
逸脱が起きたとき直ちに報告し、原因と対策を示す出荷の停止・保留を求められる報告の期限(例:○時間以内)、保留中の在庫の扱い、費用を決める
回収が必要なとき届出の要否を判断し、必要なときは届け出る(58条1項)販売の窓口・取引先への連絡を担う回収の判断を誰がするか、費用を誰が負担するか、行政への届出を誰がするかを決める

記録の項目は、契約書本文に細かく列挙しすぎないほうが運用しやすくなります。製造記録、検査記録、洗浄・点検の記録といった種類を挙げ、様式と頻度は別紙や運用要領に任せます。契約書本文には、「記録を作る・保管する・見せる」という三つの動詞が入っていれば、実務の核は押さえられます。品質保証や製造物の責任、表示の細部は別の論点として切り分けています。

施設の運営受託:修繕・保険・公的な支援の返還責任・設備の帰属を分ける

施設の運営受託は、製造委託より期間が長くなりやすく、契約書が決めるべき事項も増えます。運営の費用と責任は、大きく五つの束に分けて、一つずつ「誰が負うか」を決めていくと整理しやすくなります。

  • 日常の保守と小規模な修繕:運営者が自ら負担することが多い領域です。「小規模」を金額で区切る場合は、「○万円以下」「基本的な機能に重大な影響を及ぼさないもの」のように、金額と性質の両方で定めます。
  • 構造部分の大規模な修繕:基礎、柱、屋根のような構造上主要な部分は、所有者が負担する書き方が一般的です。ただし、運営者の故意や過失で毀損したときは運営者の負担にします。
  • 保険:施設の賠償責任、製造物に関わる賠償責任、火災などの保険に加入し維持する義務を、運営者に置く形があります。保険金額は空欄ではなく、事故ごとの額を明記します。未加入や失効があったときは、催告して是正がなければ解除できる、という組立てが使いやすい形です。
  • 公租公課その他の所有者に課される負担:所有者に課される負担を、契約で運営者に償還させる形があります。どちらがどの範囲を負担するのかを、納付と償還の期限、遅延の損害金とともに定めます。税の仕組みそのものの説明は、このガイドの対象外です。
  • 公的な支援(補助金など)の使用と返還:次の項で詳しく書きます。

公的な支援を受けて整備された施設や設備には、交付の条件として、使用の目的、期間、処分の制限などが付くことがあります。交付の条件に反して設備を処分したり用途を変えたりすると、交付を受けた側が返還を求められることがあります。運営を受託した側が、交付の条件を知らないまま設備を入れ替えたり、用途を広げたりすれば、所有者に思わぬ負担が及びます。契約書では、税の扱いに入らず、契約上の責任の分担として次の点を決めます。

書き方の例(一般的な例)公的な支援に関わる条項の書き方

交付条件の共有

よくある書き方乙は、補助金に関する法令を遵守する。
整えた書き方甲は、施設および設備に関する公的な支援の交付の条件(使用の目的、期間、処分の制限、報告の義務)を乙に書面で開示する。乙は、その条件を遵守し、設備の処分、用途の変更、改造を行うときは、事前に甲の書面による承諾を得る。

理由「法令を遵守する」だけでは、個別の交付条件が運営者に伝わっているかが分かりません。条件の開示と、処分・用途変更の事前承諾をセットにします。

返還が生じたとき

よくある書き方返還義務が生じたときは、乙が一切の責任を負う。
整えた書き方交付の条件に違反して返還が生じたときは、違反の原因を作った当事者が返還額を負担する。原因が特定できないときは、甲乙が協議して負担割合を定める。

理由一方に「一切の責任」を負わせる書き方は、運営者が負担できる範囲を超えることがあります。原因者負担を基本にすると、公平で、合意もしやすくなります。

設備の帰属と終了時の扱い

よくある書き方乙が導入した設備は乙の所有とする。
整えた書き方乙が自己の費用で導入した設備は乙の所有とする。契約が終了するとき、甲は、施設の運営に必要な設備を、別途定める価額で買い取るか、乙が撤去するかを選択できる。撤去によって施設が許可の基準に合わなくなる場合は、撤去の時期を協議する。

理由設備を引き上げた結果、施設が基準に合わなくなれば、次の運営者が許可を受けられなくなります。帰属の定めは、許可の基準との関係まで見て書きます。

運営受託の期間が許可の有効期間より長いときは、期間の途中で更新の時期が来ます。更新を受けられなければ運営は続けられないため、更新の申請の時期、更新後の許可証の写しの提出、更新できなかった場合の扱い(解除、または協議)を書いておきます。契約が終わるときには、許可の名義、施設の鍵、衛生管理の記録、従前の取引先との連絡先を、誰が誰に引き渡すかも手順にしておくと、次の運営者が空白なく事業を始められます。

起きがちなこと

最後に、この分野の契約で起きがちな場面を、あらかじめ契約で手当てしておく内容と並べておきます。

場面別に見る、許可と契約のずれ

許可の名義が違う施設で作られていた

起きがちなこと契約書には受託者の許可を確認したと書いてあったが、実際の製造は別の施設で行われていた。許可は施設ごとに受けるため(55条2項)、委託の対象の施設が許可の対象かどうかが争点になる

手当て施設の所在地を別表で特定し、別の施設で製造するときは事前の承諾を要する旨と、無承諾の場合の解除を書く

営業が譲渡された

起きがちなこと受託者が営業を他社に譲渡し、許可営業者の地位は承継された(56条1項)。しかし委託者の承諾はなく、品質管理の担当者も入れ替わった

手当て承継の事前通知と、契約上の地位の移転に対する承諾(民法539条の2)、不承諾のときの解除を書く

営業の停止を受けた

起きがちなこと受託者が一定期間の営業の停止を受けた(60条1項・61条)。委託者は納期に間に合わず、取引先への出荷が止まった

手当て処分を受けたとき・受けるおそれがあるときの通知と、停止中の発注停止、停止の日数による解除、代替の製造の手配の条項を置く

設備の撤去で施設が基準から外れた

起きがちなこと運営の終了のとき、運営者が自費で導入した設備を撤去したところ、次の運営者が許可を受けるために設備を入れ直す必要が生じた

手当て設備の帰属と終了時の買取り・撤去の選択、撤去の時期の協議、基準との関係の確認を書く

場面はいずれも一般的な例です。個別の契約では、許可の種類や運営の形に応じて手当ての内容を調整します。

食品の製造委託・施設の運営受託の契約書の点検

  • 営業を営む施設と、その施設について許可(届出)を受けている者を、別表で特定している。
  • 許可の種類、品目の範囲、有効期間や条件を、許可証の記載どおりに別表へ写している。
  • 運営の形(誰が現場で営むか)について、窓口の確認を前提条件に書いている。
  • 許可の取消し・禁止・停止の通知、履行の停止、一部または全部の解除を、条項にしている。
  • 営業の譲渡・相続・合併・分割のときの通知と、契約上の地位の移転への承諾を書いている。
  • 衛生管理の措置の作成と遵守、記録の保管と閲覧、立入り、逸脱と回収の手順を書いている。
  • 運営受託では、修繕・保険・公的な支援の使用と返還の分担、設備の帰属と終了時の扱いを書いている。
  • 許可の更新の時期と、更新できなかったときの扱いを書いている。

よくあるご質問

食品の製造を委託するとき、受託者が許可を持っていればそれで足りますか。

許可は営業の施設ごとに受けるため(食品衛生法55条2項)、受託者が許可を持っていても、委託の対象になる製造が、その許可の対象の施設で、許可の範囲の品目について行われるかを確かめる必要があります。契約書には、施設の所在地、許可の種類、番号、有効期間や条件を別表に特定し、別の施設で製造するときは事前の承諾を要することを書いておきます。

施設の運営を任せるとき、許可は誰の名義になりますか。

営業者は営業を営む人または法人です(食品衛生法4条8項)。運営を受託した側が日々の営業を営むなら、運営者が営業者として許可を受ける形が考えられますが、運営の形と施設によって異なることがあります。どの形なら誰が許可を受けるのかは、窓口の運用と条例の基準で変わるため、条文と所管の資料で確認が必要です。契約書には、確認の結果を前提条件として書きます。

受託者の許可が取り消されたとき、契約はどうなりますか。

契約書に定めがなければ、民法の一般の解除によります。履行しない相手に催告して待つ形が基本ですが(民法541条)、債務の全部の履行が不能なときなどは催告なしに解除できます(民法542条1項)。許可の取消し・停止の通知、履行の停止、催告を要しない解除を契約書に書いておけば、迷わずに動けます。許可の取消しや営業の停止の根拠は、食品衛生法60条・61条です。

受託者が営業を他社に譲渡したら、委託契約も引き継がれますか。

許可営業者の地位は、営業の譲渡があれば譲受人が承継します(食品衛生法56条1項)。しかし委託契約の当事者としての地位は、相手方が承諾してはじめて移転します(民法539条の2)。そのため、委託者は承継の事前通知と承諾を求める条項を置き、承諾しないときは解除できると書いておくと、知らない相手との契約になることを避けられます。

補助金などの返還が生じたとき、運営受託者がどこまで負うかは決められますか。

契約で定められます。税の扱いに入らず、契約上の責任の分担として、交付の条件の開示、設備の処分や用途変更の事前承諾、返還が生じたときの原因者負担を書くのが一つの型です。一方に「一切の責任」を負わせる書き方は、負担できる範囲を超えることがあるため、原因を作った当事者が負担する書き方のほうが、合意もしやすくなります。

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