警備の中止・天候・日割り半日割りの精算と保険:費用条項の書き方

雨や工事の都合で、予定した日に警備が不要になることは珍しくありません。そのときの費用を現場の交渉で決めると、双方に不満が残ります。通知の時刻、請求の単位、準備行為の扱いを、契約を結ぶときに条項にしておきます。

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「連絡がなければ準備を開始したものとみなす」と書くと、実際には準備前でも定額の負担が生じ、後で争いになりやすくなります。

このページの要点

  • 精算の条項は、通知の時刻、請求の単位(日割り・半日割り・実費)、準備行為の扱いの三つを先に決める。数字は契約ごとに設定する。
  • 準備行為は「みなす」ではなく「推定する」とし、記録で反証できるようにする。通知は送信の日時が残る方法で行い、受領を返信する。
  • 費用は種類を列挙し、警備員の振替ができたときは控除する。延期は元の日程の分を精算するのか、新しい日程に付け替えるのかを書く。
  • 賠償責任保険は、種類、保険金額、証券の提出、失効の通知を決め、保険で補われない部分の責任も書く。取適法の適用の有無も確かめる。

結論:中止の精算は、通知の時刻、請求の単位、準備行為の判断を先に決めておく

雨や強風で工事が止まる、イベントが中止になる、現場の都合で日程が動く。雑踏や交通誘導の警備では、予定した日に警備が不要になることが珍しくありません。そのときに「今日の分の費用は払うのか、半分なのか、実費だけなのか」を、その場の交渉で決めると、委託者と警備業者の双方が不満を持ちます。精算の取り決めは、契約を結ぶときに、条項として書いておく事柄です。

中止の精算で決めるべきことは三つに整理できます。第一は、いつまでに中止の連絡をすれば費用が発生しないのかという通知の時刻、第二は、その時刻を過ぎたときに何を単位に(1日分、半日分、実費のいずれで)請求できるのかという請求の単位、第三は、警備業者がすでに警備員を配置する準備に入っていたかどうかをどう判断するのかという準備行為の扱いです。この三つがはっきりしていれば、中止の原因が天候でも、現場の事情でも、同じ型で処理できます。

具体的な時刻や割合は、現場の性質や、警備員の手配に要する時間によって、契約ごとに変わります。このページでは数字を「一定の時刻」「所定の割合」と置いて、書き方の型だけを示します。対象は、委託者も警備業者も事業者である契約です。個人が依頼する契約では、消費者契約に関する別の規律が加わるため、このページの書き方をそのまま当てはめることはできません。警備員の資格や教育の条項は警備員の欠格・年齢・教育と指導教育責任者の条項で、契約前後の書面の全体は警備業務委託契約書の作り方で扱います。

精算の条項は、契約書の「おまけ」の条ではありません。警備業法第19条は、警備業者が警備業務の依頼者に、契約の前に契約の概要の書面を交付し、契約を結んだら遅滞なく契約の内容を明らかにする書面を交付することを求めています。この書面に載せるべき事項のなかに、対価、支払の時期と方法、警備業務を行う期間、契約の解除に関する事項が含まれます。中止や日程変更の扱いは、これらの項目の一部として、書面にも反映されるべき内容です。

警備業法の書面の項目と、このページの論点(雑踏・交通誘導の警備を行う契約の場合)

書面の項目根拠このページの論点
警備業務を行う日と時間帯施行規則33条1項2号(同項1号ロ)中止・変更の対象を特定する単位。半日割りの区分もここが基になる
対価、支払の時期と方法法19条2項2号・3号、施行規則33条日割り・半日割りの算定方法、請求と支払の時期、遅延損害金
警備業務を行う期間法19条2項4号契約期間と、個別の日程の関係。日程が動いたときの扱い
契約の解除に関する事項法19条2項5号中止と解除の関係。解除した場合の精算
再委託、免責、損害賠償の範囲施行規則33条1項1号カ・ヨ・タ(同項2号による)保険と責任の範囲。再委託先の中止の扱い
契約の更新・変更施行規則33条1項1号レ・ソ日程変更の手続。変更の通知の方法

中止の原因を分ける:誰の事情で警備ができなくなったのか

「中止」とひとことで言っても、原因によって、本来の筋道が違います。委託者の都合で止めるのか、天候のように誰の責任でもない事情で止まるのか、警備業者の側の事情で実施できないのか。民法には、報酬と責任の考え方の枠組みがあり、契約書はそれを当事者の事情に合わせて書き換えるものです。条文の枠組みを知っておくと、契約書のどこを具体的に書くべきかが見えてきます。

民法第536条は、当事者双方の責めに帰することができない事由で債務を履行できなくなったときは、債権者は反対給付(報酬の支払)を拒むことができるとし(第1項)、債権者の責めに帰すべき事由で履行できなくなったときは、反対給付を拒めないとします(第2項)。後者の場合、債務者(警備業者)は、債務を免れたことで得た利益を債権者に償還する必要があります。委任や請負の性質をもつ契約では、さらに既にした履行の割合に応じた報酬の定め(民法第648条第3項、第634条)や、いつでも解除できることと損害の賠償の定め(第641条、第651条)があります。警備の委託が、仕事の完成を約する契約なのか、警備という事務の処理を約する契約なのかで、拠りどころは変わります。

ここで大切なのは、天候による中止のように、誰の責めにも帰さない場合の扱いです。民法の枠組みどおりでは、報酬を拒めるのか、割合に応じて払うのかが、契約の性質の評価に左右されます。そこで契約書は、「天候その他の事由による中止の場合は、次の各号に従い精算する」と、原因を挙げて書き、判断の余地を減らします。

中止の原因別の整理(考え方の例)

原因誰の事情か契約書で決めておくこと
天候の悪化・災害双方の責めに帰さないことが多い中止の判断者(誰が決めるか)、判断の基準(雨量、風速などは数字を伏せて「一定の基準」とする)、連絡の手段、精算の単位
委託者の都合(日程の変更、発注の取消し)委託者の事情通知の時刻に応じた負担の割合。通知が遅れたときの実費と、再手配ができたときの減額
現場側の事情(工事の延期、主催者の判断)委託者の側の事情として扱うのが一般的委託者が現場の情報を警備業者に伝える義務。主催者や元請の判断で止まる場合の連絡の経路
警備業者の事情(人員の手配不能、行政の指示)警備業者の事情実施できない部分の減額、代替の手配、委託者が他の警備業者に委託したときの費用の負担
不可抗力が長く続くとき双方の責めに帰さない一定期間が過ぎたら契約を解除できること。解除の場合の精算

表の第二行と第三行を分けるのには理由があります。工事や催事は、委託者自身の都合で動くこともあれば、さらにその上流にいる発注者や主催者の判断で動くこともあります。警備業者から見れば、どちらも「委託者の側の事情」ですが、委託者から見ると、自分の力が及ばない事情です。この食い違いを避けるために、委託者は、現場の変更について情報を得たら、警備業者に速やかに伝える義務を負う、と書いておきます。この義務を果たしていれば、通知が遅れたことを責められにくくなり、果たしていなければ、費用の負担が重くなる、という形で、条項に動機づけを持たせることができます。

通知の時刻と、日割り・半日割り:みなし規定と推定規定の違い

通知の時刻の置き方には、よく見られる型があります。「前日の一定の時刻までに中止を連絡したときは、費用は発生しない」「当日の一定の時刻までに連絡があったときは、半日分とする」「それ以降は1日分とする」のように、時刻の区切りを複数置いて、請求の単位を段階的にする書き方です。時刻の区切りは、警備業者が警備員を現場に送り出す準備に入る時間や、警備員を他の現場に振り替えられる時間を目安に決めます。

この型で注意が要るのは、「連絡がなかったときは、警備業者は警備員を配置する準備行為を開始したものとみなす」のような、みなしの規定です。みなしは、反対の事実があっても覆せません。実際には準備に入っていなかったのに、連絡の時刻を過ぎたという理由だけで、定額の負担が生じる形になります。事業者間の契約でも、実際の準備と無関係な定額の負担は、後に争いになりやすいところです。「推定する。ただし、警備業者が準備行為を開始していなかったことを委託者が示したときは、この限りでない」とすれば、事実に基づく反証の余地が残り、双方にとって納得しやすい形になります。

半日割りや1日割りの区分も、あいまいにしないことが大切です。「午前中に業務が始まった後に中止となったときは半日分」とだけ書くと、午前に始めて午後に続けた場合、午前の途中で終わった場合、午後だけの予定だった場合の区別がつきません。予定された警備の時間帯(契約に添えた日程表などに記載された開始時刻と終了時刻)を基準に、「予定された時間帯の前半が実施された場合は〜、後半まで実施された場合は〜」のように、時間帯を基準にして書き、実施の有無は日報や配置の記録で確かめられるようにしておきます。

書き方の例(一般的な例)通知の時刻と請求の単位の書き方

準備行為の扱い

よくある書き方当日の一定の時刻までに中止の連絡がなかったときは、乙は警備員を配置する準備行為を開始したものとみなす。
整えた書き方当日の一定の時刻までに中止の連絡がなかったときは、乙は警備員を配置する準備行為を開始したものと推定する。ただし、乙が準備行為を開始していなかったことが、乙の配置の記録その他の資料から明らかな場合は、この限りでない。

理由みなしは覆せず、実際の準備と無関係な負担を生みます。推定にして反証を認めると、事実に沿った精算になり、後の争いが減ります。

請求の単位

よくある書き方午前中に業務を開始した後に中止となったときは半日分、午後に業務を開始した後に中止となったときは1日分を請求できる。
整えた書き方予定された警備の時間帯のうち、実施された部分に応じて、所定の割合を請求できる。時間帯の区分と割合は、日程表に定める。実施の有無は、日報及び配置の記録により確認する。

理由午前・午後で区切ると、予定が複数にまたがる日や、午後だけの予定の日で結果が不均衡になります。予定の時間帯を基準にすれば、日程ごとの違いを吸収できます。

中止の事由と判断者

よくある書き方天候その他のやむを得ない理由により中止となった場合。
整えた書き方雨量・風速その他の事由が、日程表に定める基準に達し、甲が中止を判断して乙に通知した場合、または乙が安全を確保できないと判断して甲に協議を求め、甲が同意した場合。

理由「やむを得ない理由」だけでは、誰が中止を決めたのかが分かりません。判断の基準と、決める者、連絡の経路を書いておくと、中止の通知が精算の起点として働きます。

通知の手段も、時刻と同じくらい重要です。電話だけの連絡は、いつ、誰が、何を伝えたかの記録が残りません。精算の起点になる通知は、電子メールやチャットなど、送信の日時が残る方法で行い、受け取った側が受領を返信して確認する、という運用を条項にしておくと、「通知が間に合ったかどうか」の争いを避けられます。電話で急ぎの連絡をした場合は、電話の後に、同じ内容を文書で送ることを義務づけます。

中止の連絡から精算までの流れ(一般的な例)

  1. 中止の判断天候の基準への到達、現場の変更、主催者の判断などにより、委託者が中止を決めるか、警備業者が安全の確保が難しいとして協議を求める。
  2. 通知日程表に定めた通知の時刻までに、定められた方法(送信の日時が残る方法)で、相手方に中止を連絡する。電話で連絡したときは、同内容を文書で送る。
  3. 受領の確認通知を受けた側が、受領した旨を返信する。確認が取れない場合の扱い(再送、別の連絡先)も決めておく。
  4. 準備状況の記録警備業者は、警備員の配置の準備の状況(配置の連絡、資機材の準備の有無)を記録する。推定の反証の資料になる。
  5. 精算書警備業者は、請求の単位と、費用の内訳を記した精算書を、所定の期限内に委託者へ提出する。
  6. 支払委託者が精算書を確認し、支払期日までに支払う。異議があるときは、期限内に理由を示して通知する。

期限の日数は契約ごとに決めます。大切なのは、各段階の起点と、記録の残り方がそろっていることです。

費用の範囲:人の費用、資機材、移動、すでに確保した分

中止の精算で争いになるのは、請求の単位よりも、むしろ「何を費用に含めるか」です。警備の費用は、警備員の配置に係る対価のほか、標識や誘導灯のような資機材の設置・撤去、警備員の移動や宿泊に要する費用など、複数の要素から成ります。契約の本体には「委託料には、警備業務の実施に通常要する費用を含む」と書かれていることが多く、中止のときにそれが全額になるのか、実施した部分だけになるのかが決まっていません。

考え方の筋道は、実際にかかった費用と、避けられた費用を分けることです。中止の連絡が遅れた場合に請求できる額は、警備業者が既に支出した、または支出を避けられなかった費用が中心になります。警備員を他の現場に振り替えることができたなら、その分は警備業者が得た利益として、民法第536条第2項の趣旨にしたがって、償還の対象になり得ます。したがって契約書には、請求できる費用の種類を列挙し、振替ができたときは、その分を控除する旨を書いておきます。

中止のときの費用項目と、条文に書く点(一般的な例)

項目請求の考え方条文に書く点
警備員の配置に係る対価予定の時間帯に確保した分は、通知の時刻に応じた割合で請求する。振替ができた分は控除する割合を日程表に書く。振替の努力義務と、振替ができた場合の通知
資機材の設置・撤去設置済みであれば実費。設置前に中止なら発生しない設置の開始時点を記録する。再利用ができるものは対象外にする
移動・宿泊に係る費用手配済みで取消しできないものは実費。取消しできるものは取り消す義務取消しの義務と、取消しにかかった手数料の負担
再手配の費用日程が変わっただけなら、新たな手配に要した費用を別に扱う再手配の対価を新しい日程の委託料として扱うか、追加の費用とするか

費用項目の表の「再手配」にも、書き分けのポイントがあります。中止ではなく延期(日程の変更)であれば、警備業者は新しい日程に警備員を手配し直すことになります。このとき、元の日程の分の精算と、新しい日程の委託料が二重にならないように、延期は「元の日程の分は精算せず、新しい日程の委託料として扱う」のか、「元の日程の分の実費を負担したうえで、新しい日程で改めて契約する」のかを、決めておきます。延期が何度も続く場合の扱い(一定の回数や期間で打ち切る)も、書いておくと現場が混乱しません。

賠償責任保険と、保険が使えないときの責任

警備の事故は、通行人や車両に損害を与えるおそれがあり、その賠償を警備業者が確実に履行できるかが、委託者にとっての関心事です。契約書では、警備業者に、警備業務中の事故で第三者に与えた損害を補う賠償責任保険への加入を求めるのが一般的です。ここで決めるべきなのは、保険の種類、保険金額の下限、保険証券の写しの提出、保険の更新と失効の通知、保険で補われない部分の責任の五点です。

保険金額は、「甲が合理的に指定する額以上」のような抽象的な書き方より、「別紙に定める金額以上」と別紙で特定し、現場ごとの条件(交通量、イベントの規模)に応じて見直せるようにしておくほうが実際的です。免責金額(自己負担額)や、保険が対象としない事由(故意、法令違反など)も、契約時に確認して、警備業者が負担する範囲を書いておくと、事故の後に「保険で出なかった部分は誰が負うのか」を争わずに済みます。

なお、警備員自身の災害に備える保険のような、働く人に関する公的・民間の制度は、このガイドでは扱いません。ここでは、警備業務中の事故で第三者に与えた損害の賠償に関する保険と責任だけを書きます。事故が起きたときの報告の期限や、関係機関への連絡といった事項は契約の本体の条項に置くものとし(契約全体の組み立ては警備業務委託契約書の作り方を参照してください)、ここでは保険と精算の接点に絞ります。

第○条賠償責任保険(一般的な例)

  1. 乙は、本業務の実施に起因して第三者に生じた損害を賠償する責任を補う賠償責任保険に、本契約の期間中、別紙に定める保険金額以上で加入し、これを維持するものとする。
  2. 乙は、本契約の締結時及び保険契約の更新の都度、保険証券の写しその他加入を証する書面を甲に提出する。保険契約が失効し、又は保険金額が減額されるときは、事前に、又は事後遅滞なく、甲に通知する。
  3. 乙が前二項の義務に違反して保険による補償が受けられず、又は保険で補われない損害(免責金額、保険の対象としない事由によるものを含む。)が生じたときは、乙は、法令及び本契約の定めに従い、その損害を賠償する責任を負う。乙は、保険に加入していることを理由に、自己の責任を免れることはできない。
  4. 甲は、第1項及び第2項の義務の違反が是正されないときは、相当の期間を定めた催告のうえ、本契約を解除できる。ただし、保険の失効が直ちに警備の実施を危うくするときは、催告をしないで解除できる。

保険に加入している事実と、責任が及ぶ範囲は別の問題です。保険は賠償の資力を補うもので、責任の有無そのものを決めるものではないため、責任は保険の有無にかかわらず残る、と書いておきます。

賠償の範囲を契約で限定するときの書き方にも、工夫が要ります。警備業法の書面には、免責に関する事項と、損害賠償の範囲・額その他の賠償に関する事項が含まれる(施行規則第33条第1項)ため、賠償責任の上限を設ける場合は、この書面にも同じ内容を載せる必要があります。上限を設けるなら、故意または重大な過失による損害を上限の対象から外す旨を併せて書くのが一般的です。警備業者の側から見れば、警備の対価に対して賠償額が過大にならないための条項であり、委託者の側から見れば、保険金額と上限が整合しているかを確かめる材料になります。

支払、遅延損害金、留保と減額:取適法が適用される場合の注意も含めて

精算が済んだあとの支払にも、書き方の勘所があります。まず、請求書の提出の期限と支払期日を、締め日を基準に決めます。次に、支払期日までに支払われなかったときの遅延損害金です。金銭債務の不履行については、民法第419条が、損害賠償の額を法定利率で定め、約定の利率がそれを超えるときは約定の利率によるとしています。契約書に約定の遅延損害金の率を書く場合は、取引の実態に照らして合理的な範囲にとどめます。率を高く定めすぎると、後から調整を求められたり、他の条項との釣り合いが問われたりすることがあります。

委託者が、警備業者の履行の不備を理由に、委託料の支払を留保したり減額したりする条項を置くこともあります。この条項は、範囲を「不履行があった部分に対応する額」に限り、不履行の内容と金額の根拠を書面で示して通知することを求める形にすると、運用しやすくなります。「不履行または遅延が認められるときは、委託料の全部または一部の支払を留保し、または減額できる」とだけ書くと、委託者が一方的に決められるように読めて、対価の額を巡る争いのもとになります。

さらに、取引の組み立て次第では、取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)が関わることがあります。委託する側が、他の者に提供する役務の一部を警備業者に委託するようなときは、同法の役務提供委託に当たる場合があります(第2条第4項)。ただし、同法が適用されるかどうかは、委託する側と受ける側の資本金の額や従業員数の区分、役務の種類によって決まる(第2条第8項・第9項)ため、取引ごとに条文で確かめる必要があります。適用がある場合は、代金の支払期日が役務の提供を受けた日から起算して60日の期間内で、できる限り短い期間内に定められること(第3条)、給付の内容、代金の額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示すること(第4条)、受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに代金の額を減ずることの禁止(第5条第1項第3号)、支払期日を過ぎたときの遅延利息(第6条)といった規律が、契約の条項に関わりなく働きます。減額や留保の条項を置くときは、この点にも気をつけます。

確認の問い支払条項を詰める前の確認の問い

  1. 中止に伴う請求書の提出期限と、支払期日は、通常の委託料と同じ締めに載せるのか。

    理由中止分だけ別の期日にすると、月次の経理と合わなくなります。通常の締めに載せるか、別に期日を設けるかを先に決めます。

  2. 支払の留保や減額は、どの範囲まで、どのような通知を前提に認めるのか。

    理由範囲と通知の形が決まっていないと、委託者の一方的な判断に見えて、対価の争いになります。

  3. 遅延損害金の率は、取引の実態に照らして合理的か。

    理由民法第419条は、約定の率があればそれによるとしますが、極端な率は他の条項との釣り合いを問われます。

  4. 取適法の適用がありうる取引か。

    理由適用があれば、支払期日、書面の明示、減額の禁止などが条項に優先して働きます。委託する側と受ける側の区分を、条文で確かめます。

起きがちなこと

中止と精算の条項で起きがちなことを、場面別にまとめます。いずれも、条項の書き方で防げる事柄です。

場面別:起きがちなことと手当て

雨で当日の朝に中止にしたら、警備員は既に向かっていた

起きがちなこと委託者は前日までに中止を判断できなかったが、当日朝の連絡では、警備員はすでに出発しており、1日分の請求を巡って意見が分かれた。

手当て通知の時刻を段階で置き、時刻ごとの請求の単位を決める。天候の基準と判断者を日程表に書く。

電話で伝えたが、受けた記録がない

起きがちなこと委託者は電話で中止を伝えたと主張し、警備業者は連絡を受けていないと主張した。通知の時刻に間に合ったかどうかを確認できなかった。

手当て精算の起点になる通知は、送信の日時が残る方法で行い、受領の返信を求める。電話の後は文書で同内容を送る。

連絡がなければ準備を開始したものとみなす、とあったが、実際は準備前だった

起きがちなこと警備業者は配置の連絡を前日に出していなかったが、通知の時刻を過ぎたため、みなしの規定で定額を請求した。委託者は納得せず、争いになった。

手当て「みなす」ではなく「推定する」とし、準備行為の記録で反証できるようにする。

保険証券の期限が切れていた

起きがちなこと契約締結時には保険証券の写しを受け取ったが、更新の写しは受け取っていなかった。事故が起きてから期限切れが分かった。

手当て更新の都度の提出と、失効の通知を義務にする。保険で補われない部分の責任を、保険の有無と別に書く。

延期が重なり、どの日程の分を精算するのか分からなくなった

起きがちなこと日程が二度動き、元の日程の準備費用と新しい日程の委託料が混ざって請求された。

手当て延期は、元の日程の分を精算するのか、新しい日程に付け替えるのかを書く。延期の回数や期間に区切りを置く。

支払や取適法に関わる点は、許可の保有を相手に約束させる契約条項の考え方と合わせて契約書に反映します。警備業者の認定が失われたときの契約の終わり方は許可の取消し・停止・失効のときの契約の出口で扱います。

契約書の点検リスト(中止と精算)

  • 中止の通知の時刻と、時刻ごとの請求の単位を決めているか(数字は契約ごとに設定)。
  • 準備行為の扱いを「みなす」ではなく「推定する」とし、反証の方法を書いているか。
  • 半日割り・1日割りの区分を、予定の時間帯を基準に書いているか。
  • 中止の原因(天候、委託者の都合、現場側の事情、警備業者の事情)ごとの扱いを書いているか。
  • 費用の種類を列挙し、警備員の振替ができたときの控除を書いているか。
  • 延期のときの精算と付け替えの扱いを書いているか。
  • 賠償責任保険の種類、保険金額、証券の提出、失効の通知、保険で補われない部分の責任を書いているか。
  • 支払の留保・減額の範囲と通知の形を書いているか。取適法の適用の有無を確かめたか。

よくあるご質問

警備の中止で、費用はどの時点から発生しますか。

契約で決めた通知の時刻を基準にします。一定の時刻までに中止を連絡すれば費用は発生せず、それを過ぎると半日分や所定の割合の費用が発生する、という段階を置くのが一般的です。時刻と割合は現場の実情で変わるため、契約書に書いておく必要があります。民法の枠組みでは、委託者の責めに帰すべき事由か、双方の責めに帰さない事由かで報酬の扱いが分かれますが(民法第536条)、契約の性質の評価に左右されるため、条項で具体的に決めるのが安全です。

「連絡がなければ準備を開始したものとみなす」と書くのは問題ですか。

みなしは反対の事実があっても覆せないため、実際には準備に入っていなかった場合にも定額の負担が生じ、争いになりやすい書き方です。「推定する。ただし、準備行為を開始していなかったことが記録から明らかな場合は、この限りでない」のように、反証の余地を残すと、事実に沿った精算になります。

警備員が他の現場に振り替えられた場合も、全額を請求できますか。

一般には、振替によって警備業者が得た利益は、精算で控除されます。民法第536条第2項の後段は、債務を免れたことで利益を得た者に、その償還を求めています。契約書には、振替の努力義務と、振替ができたときの通知、控除の方法を書いておくと、請求の根拠がはっきりします。

警備員の災害に備える保険も、この契約書に書くべきですか。

このページでは、警備業務中の事故で第三者に与えた損害を補う賠償責任保険だけを扱います。警備員自身の災害に備える制度は、働く人に関する別の制度で、このガイドの対象外です。契約書に書くとしても、第三者への賠償の保険とは別の条として整理するのが分かりやすくなります。

取適法は、警備の委託にも関係しますか。

取引の組み立て次第では関係します。委託する側が、他の者に提供する役務の一部を警備業者に委託するときなどは、同法の役務提供委託に当たる場合があります(第2条第4項)。適用の有無は、委託する側と受ける側の資本金の額や従業員数の区分、役務の種類によって決まるため(第2条第8項・第9項)、取引ごとに条文で確かめる必要があります。

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